ミカドヤな日常

アートディレクター/グラフィックデザイナーの夫とイラストレーターの妻の日常です。ミカドヤのHPはコチラ:design.mikadoya.jp

K社長の約束。

毎年クリスマスの時期に放送される小田和正さんのスペシャルイベント、『クリスマスの約束』。
今年で13回目を迎えます。
タイトルはK社長制作の手書きロゴ。
そのロゴタイプを見る度、
私は東京のとあるデザイン事務所を思い出します。


その会社のクライアントの中には、
小田和正さんの事務所ファー・イースト・クラブがあり、
入社して初めていただいた仕事が
ライター兼イラストレーターでもあるK社長が描いた、アルバム『自己ベスト』のジャケット、
東京の街並みに色をつける作業。
「こ、こ、こんな僕でいいの!?」と内心オドオドと作業していると、また内線で呼ばれる。
お次は小田さんの新譜『キラキラ』のジャケット制作に伴い、社内デザインコンペ。
まだ世に出ていないホヤホヤの楽曲を夜通し聴いてイメージを膨らます。
とにかく自分が出したアイデアが採用されるよう、新人の私はそれこそ「ギラギラ」。
何の因果かその曲は、深津絵里扮する新人デザイナーが悪戦苦闘しながら成長していく
フジテレビドラマ『恋ノチカラ』の主題歌でした。
(ちなみに私の案は見事に不採用。←ドラマのようにはいきませぬ)





青春時代をオフコースと共に過ごしてきたK社長は、小田さんを「神」とあがめるほど超大ファンで、
「いつか小田さんと仕事をしたい。」と思ってこの世界に入ったそうな。
だからといって、イキナリ小田さんの事務所に飛び込み営業しても
「ファンなので作らせてください」「じゃお願い」なんてことは絶対にない。
まして小田さんは、人に対して心を開くまでになかなかの時間がかかる人のよう。(←あくまで聞いた話です笑)
ただ驚くのはあんな繊細な歌声の方なのに、プライベートでは明朗活発・スポーツマンのようで、
実際ご自身の草野球チームを持ってらっしゃるくらいでした。


そこに一分の望みを見いだした社長。
まず、少しでも「神」にお近づきになろうと、野球の審判の資格をとり、
小田さんが参加する草野球試合の審判をずっと担当させていただいたそうな。
打ち上げなどでちょっとずつ顔見知りになり、10年。
「ファン」ということは一切明かさず、
初めて「あの〜実はこういうデザインの仕事をやっているので、
ツール制作の際など、コンペに参加させてくれませんか?」と明かす。
『憧れの小田さん』が『クライアントの小田さま』になった瞬間である。




打ち明けるまで10年・・・。当時、社長はさらっとに話されてましたが、すごい情熱です。

『自己ベスト』はその後300万枚を超える大ヒット。
それからもジャケットはもちろん、グッズから何から小田和正さんが絡むもの全て社長のイラストが採用され、
改めて社長は学生時代からの「いつかこの人と仕事をしたい」という夢を叶えたのでした。



クリスマスの約束』のビジュアルを見るたび、
ニコニコしながら新譜に耳を傾けてたK社長を思い出します。