ミカドヤな日常

アートディレクター/グラフィックデザイナーの夫とイラストレーターの妻の日常です。ミカドヤのHPはコチラ:design.mikadoya.jp

屈折くん。

中学生の時から敬愛しておりますイカ天出身バンド『人間椅子、めでたいことに今年で30周年を迎えられました。f:id:iengmwk:20190722171252j:plain

ときに、活動休止していたミュージシャンが「●周年」と発表すると、果たして休止していた時期もカウントしていいものなのだろうかといつも疑問に思ってしまいますが、人間椅子は結成から一度も止まることなく30年間走り続けております。

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ねずみ男の衣装が印象的だった当時は色モノバンドのカテゴリに入れられ、その高い演奏力や独特の歌詞の世界よりも、見た目と津軽弁の歌い口から、友人たちに「何聴いてんだお前は!笑」と、よくイジられたものです(お前らは何もわかってない)。

 

偉大なるロックスターの記念すべき節目のツアー、見届けないワケにはいきません。音楽好きの友人たちに声をかけてみましたが、「いやぁ、、、人間椅子はいいよ笑」とことごとくお断りされてしまいました(お前らも何もわかってない)。

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小雨の降りしきる会場には数時間前からゾロゾロと人が集まっておりました。
(ただ、どことなく一人で来ている方が多いような・・・。←そうこなくっちゃ!)

 

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ライブはもう何もいうことありません、全てにおいて「素晴らしすぎる」の一言。
後で紹介する様々な感情が交錯し、ヘッドバンキングしながら号泣したのはこの日が初めてです。

 

 

 

私は自営業です。特にデザイナーなんていう水商売はいい時もあればそうでない時もあります。もちろん会社員だってそうだと思います。先のことなんて誰もわかりません。
そんな私は自分に負けて、この仕事が本当に向いているのか、もう無理かもしれないな、という弱さが降りてくることもありました。

 

そんな時に手にしたギターの和嶋氏(以下、ワジー)が出した自伝本。
争いごとが嫌いな優しい少年がふとした事件からイジメにあい、その鬱屈した青春時代を文学小説や宇宙・UFO、そしてロックに救ってもらいながら「僕はコレで食べていく!」と決意するまで。。。イカ天の成功から華々しいプロデビュー、バンドブーム終焉による事務所との契約解除、インディーズでの長い長い下積み生活。。。
彼らはそれでも精力的にライブ活動とアルバム制作を続け、プロでの再契約に至ったのは50歳も目前の頃。結局それまで20数年間、アルバイトをしながらインディーズでのバンド活動を続けてきたそうです。その原動力はあの中学生の頃のまま、ただただ純粋に『好きな音楽をやりたい』という思いだけだったそうです。

 

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・・そしてついに、今年リリースの最新アルバム『新青年』がオリコンチャート初登場14位を記録。動画再生回数も世界中で190万回を突破し、ワジーの本も現在第3版発行。。また泣けてきます。
決して美しいことばかりではないですが、好きなことをやり続けるその素晴らしさを彼らに教えてもらいました。いや、本当にスゴいです。
私ももう迷いません、デザインで生きていこうと思います。少なくとも自分に負けて投げ出すことはしたくありません。目の前の霧が晴れたような、そんな想いを再確認させてくれた人間椅子と、常に新しい世界に連れて行ってくださるお取引先の皆さんに、心より感謝しております。

 

 

 

最後に、屈折くんのまえがきをご紹介いたします。ここにもう全てが詰め込まれています。

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 果たして、僕に自伝を著す資格などあるのか、と思います。自伝や伝記というのは偉大な仕事を成し遂げた人が出すものです。一方僕といえば、ロックバンドでギターを弾いている、ただそれだけの人間です。そのバンドも、ヒットチャートの上位に入ったことなどありませんし、特別な賞をもらったこともないし、いつもテレビに出ているわけでもなく、アリーナみたいな大きなところでコンサートを行ったこともありません。業績でいうなら、僕より自伝を書くべき人間は大勢います。ただ、僕に何か誇れるものがあるとしたら、好きなことを続けるために苦労を重ねてきた、ということです。なんだ、お前の苦労なんて大したことないじゃないか、そう思われる方もいることでしょう。でも、僕にとってそれは大変なことでしたし、そのことによって自分は本当に何をすべきか、自分はどう生きていくべきかがわかりました。それを教えてくれた苦労と試練は、僕にとっては宝石のようなものです。好きなことをやっていられるありがたさが、しみじみと分かるようになりました。きっと、その人にはその人の苦労が待っています。僕には、あえてそんな道を選んでしまうような、要領の悪い、馬鹿なところがあります。だから、この本は馬鹿な男の話だと思って読んでください。そして、馬鹿は馬鹿なりに考えて、自分の人生の道標を見つけることができました。もうそんなに道に迷うこともないでしょう。道につまずくことはあるかもしれません。でも馬鹿は馬鹿だから知っています。人生に失敗はありません。それは試練なのです。

『屈折くん』 和嶋慎治

 

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ちなみに彼の卒業アルバムを装丁にした裏表紙には、数年後、ねずみ男の扮装でイカ天を騒がせる『あの男』が純粋な瞳で写っているのでした。