ミカドヤな日常

アートディレクター/グラフィックデザイナーの夫とイラストレーターの妻の日常です。ミカドヤのHPはコチラ:design.mikadoya.jp

博多の肉割烹。

福岡市中央区高砂にございます、肉割烹『膾炙(かいしゃ)さま。
焼肉でも鉄板焼でもない、和を軸としたコース仕立ての牛肉を堪能できる、15周年を迎えた名店。ご依頼内容は今後ECサイトの立ち上げによる商品ロゴ・ツールデザイン制作。


店主・伊藤さまの和牛に対する想いや経営に対する姿勢などを伺っておりますと、パッケージ用のためのデザインを提案するのではなく、ECサイトを立ち上げるこのタイミングを私たちは膾炙さまの第2ステージと捉え、今一度膾炙ブランドの底上げと土台の再構築を提案。
膾炙の魅力が伝われば商品にも同一のイメージで展開するだけです。同じご予算なら単なるパッケージだけに収まるのではなく、既存の店舗へも足を運びたくなる、膾炙にしかない魅力をより引き出し新たなファンを獲得しましょう、という考えです。

もちろん既にたくさんのファンがいらっしゃいますが、今一度お客さまのニーズを分析。なぜ他の肉料理店ではなく膾炙を選ぶのか。『和牛といえば膾炙』だったこれまでを、16年目からは『博多の肉割烹といえば膾炙』と輪郭をより明確にし、多くの方に認知されることを第2ステージの指針に。
熟成しはじめた膾炙さまの佇まいにふさわしいコトバとロゴマーク。力強さの中にもしっとりとした品格をカタチにできないかと検証しました。

 

ヒヤリングで目からウロコの話がありました。
私は今までバカのいっちょ覚えのように、ステーキの焼き加減は必ず「レア」、「せっかくプロに焼いてもらうんだからレアにしとかないと勿体ない」と、牛肉の美味しさ=レアが当然と考えておりました。しかしどれだけいいお肉であっても実はレアでは肉本来の味を堪能できていないことが判明。
外側だけでなく、内側の火の通りを均一にすることで肉汁が程良くまわり、一番美味しい状態になるということを(説教まがいに笑)手描きの断面図にて解説していただきました。

最高の火入れの時間はお肉の部位・状態によってそれぞれ違うこと。接客しながらも常にその時間を見極め、お客さまのお好みの焼き加減と掛け合わせ、最高級の九州和牛を余すことなく最高のタイミングでお出しする。

「ここが料理人の技術の結晶、私の腕の見せどころなんですよ。笑」

にこやかに話される伊藤さんの言葉に膾炙の全てが集約されていると確信。
「伊藤さん、そのメモください!」と伊藤メモを即座に入手。

手描きの断面図を数日間検証し、膾炙のシンボルマークを制作。もはや説明不要です。

細かなフォルムには、
・旨味がギュッと凝縮され、肉汁があふれ出る瞬間
・縁起の良い末広がりの図、店名の元となったことわざ『人口膾炙【美味しさを広げる】』
・料理好きだったお母様から受け継いだ味への探究心
そして、伊藤の「I」を込めました。

 

ロゴタイプには半世紀前の書道字典をベースに親族の書家に依頼。

 

膾炙さまの価格帯に見合った佇まいのロゴマークが完成。

伊藤さんが大切にしている造語「即分万福」で落款、筆文字を意識した英文ロゴタイプ
(このタイミングで既存の『KAISYA』のロゴ表記をヘボン式に統一することを提案。)

「はかた肉割烹」をロックアップしたロゴマーク

 

同時進行で、今後展開されるECサイトに膾炙を語る言葉も探りました。
サイトで注文する時というのは「あの日にあの人と食べたいな」「あの日にあの人に贈りたいな」と、未来を思っています。

大切なその日を膾炙の味で過ごしてほしいという想いを込めたタグラインを元にブランドメッセージも制作。「美味しい・上質・笑顔・幸せ」などの単語を使わず膾炙さまのスタンスや志を表現。

パッケージラベルはこれから展開される商品全てに使いたいとのことで、一枚での汎用性を重視し、
ローストビーフや既存の御弁当など今後様々な商品に使用できるサイズと情報の整理を行いました。

それ以外に名刺やショップカード、リーフレットなど膾炙のツールも新調。とても喜んでいただきました。

大切な方との記念日はもちろん、「今日はとことん良い肉を食べるぞ」という気分の朝、膾炙さまを思い出していただければ幸いです。

 

■肉割烹 膾炙
住所:福岡市中央区高砂1丁目5-2-2F
TEL:092-526-2377
営業時間:17:30~22:30(OS/22:00)
【ランチタイム】11:30~13:30(火~土)
定休日:毎週日曜日